NISA(制度としくみ)

市川雄一郎のNISA講座(13)NISAのロールオーバー 忘れた場合どうなる?どう対処する?

NISA制度は2024年から制度変更になります。本記事は制度変更前の内容となっており、2023年内いっぱいまで有効です。くわしくは新制度について現行制度からの変更点を書いた以下の最新記事をご覧ください。

【速報・2024NISA拡充】2制度同時利用・恒久化で投資枠年360万*生涯枠1800万円に!2024年からNISAの制度が大幅に変更になります。2022年12月の与党税制改正大綱に盛り込まれる内容をもとに、新規制度の要点を速報しました。...

 

節税効果が高いNISA(一般NISA)ですが、非課税期間は最長で5年間となっています。

 

しかし、ロールオーバーをすることで、非課税期間をさらに最長5年間、延長することが可能になっています。

 

お得で便利なロールオーバーの制度ですが、利用するには口座を持っている金融機関に対して一定の手続きが必要です。

 

さらに、手続きができる期間も定められているので、ロールオーバーを忘れてしまう場合があります。

 

今回はその忘れた場合どうなるかを説明しましょう。

 

NISAとロールオーバーについて

まずはNISAとロールオーバーの簡単な説明から。

 

「少額投資非課税制度」と呼ばれるNISAは、2014年1月に始まりました。株式や投資信託などの運用から得られる利益や配当金が一定期間非課税となり、節税ができるお得な制度です。

 

出典:金融庁「NISAの概要」

 

1年間でNISAに投資できる金額は120万円です。

 

しかし、保有している商品が値上がりして、5年後の時価が120万円を超えていたとしても、ロールオーバーではその全額を新たな非課税枠に移し替えることができます。

 

ロールオーバーの手続きは任意となります。5年の非課税期間が終了した後の保有方法などについては、投資家がそれぞれの判断で、手続きをするかどうかを決める必要があります。

 

【出典】ZUU  NISAのロールオーバーとは?いつまでにしないと損する?

 

ロールオーバーの手続きについて

保有している金融商品のすべてを一度にロールオーバーすることも可能ですし、保有している銘柄の中からしたいものを選択して行うことも可能です。

 

ロールオーバーする場合には手続きが必要となり、必要書類の提出方法や提出期限は各金融機関によって異なります。

 

金融機関からの案内を確認して、その期間の定める方法に従って、期限内に提出しなければなりません。

 

ロールオーバーを忘れた場合

ロールオーバーは、金融機関等が勝手に行ってくれる手続きではないので、うっかり忘れてしまう可能性もあります。

 

ロールオーバーの手続きを忘れてしまった場合には、NISAで保有している金融商品は強制的に課税口座に移管されてしまいます。そして、一度課税口座に払い出された金融資産は、NISA口座に戻すことはできません。

 

ロールオーバーの手続きを忘れてしまった場合ですが、忘れたことに気づいた時期によって、選択できる方法が若干変わってきます。

 

年度末までに気づいた場合

ロールオーバーを忘れてしまったことに年度末までに気付いた場合は、年度内に売却してしまうという方法があります。

 

利益が出ている商品の場合、年度末までに売却すれば非課税で利益を確定することができます。

 

ロールオーバーができなかった場合、特定口座への移管は翌年の年初に行われます。年内に売却してしまえば、非課税のメリットを受けられる上に、煩雑なロールオーバーの手続きをしなくても済みます。

 

さらに、証券会社によっては、NISA口座での売買は手数料が無料の場合があります。課税口座での売買には手数料がかかるので、NISA口座のうちに売ってしまえば、手数料もかからずお得に利益を確定することができます。

 

ただし、ここでいう「年内」とは受渡日ベースのことです。受渡日が年内になるように、しっかりと確認をするようにしましょう。また、投資信託の場合は、受け渡しにさらに時間がかかるので早めに売却する必要があります。

 

年度末までに気づかなかった場合

 

ケース①いったん売却する

引き続きNISA口座で金融商品を運用したい場合には、課税口座に移管された商品をいったん売却して、NISA口座で再度買い直す必要があります。

 

課税口座での売買には手数料がかかってしまいます。さらに、期限が切れる前に保有していたNISA口座は再利用できないので、新たにNISA口座を開設する必要もあります。費用も時間も手間もかかる方法になります。

 

しかし、以前とは違う金融機関にNISA口座を開設することも可能です。取り扱っている金融商品やサービスを比較して、NISA口座を開設する金融機関を再度検討できるというメリットもあります。

 

また、一般NISAと積立NISAの口座は、同時に保有することができません。

 

この場合、一般NISAの口座は消滅しているので、新たにNISA口座を作る際に、一般NISAかつみたてNISAかを選択することができます。

 

今までNISA口座を保有していてつみたてNISAを行えなかった方も、これを機会につみたてNISA口座を開設して運用を開始するということができます。

 

しかし、時価が120万円を超えている商品は、NISAの1年間の預け入れ金額を超えてしまうので、新しく作ったNISA口座では保有できません。ロールオーバーしたNISA口座でしか保有ができないので、注意が必要です。

 

ケース②そのまま課税口座で保有する

ロールオーバーを忘れると、NISA口座で保有している金融商品は、課税口座に強制的に移管されることになります。その際の評価額は取得時の価格ではなく、移管時の価格で評価されます。

 

そのため、NISA口座で保有していた金融商品が課税口座に払い出されたからといって、その後の利益がすべて課税されるというわけではありません。

 

NISA口座で購入したときに100万円だった株が移管時に50万円になっていたとしたら、移管後の課税口座では50万円で入手したことになります。

 

ただし、その後50万円以上になって売却した場合は、当然利益に課税されます。

 

たとえばNISAで100万円で購入した株が課税口座に移管されたとき50万円に減っていたとします。これが再び100万円に戻ったので売却した場合、NISA口座で取得した価格に戻っただけなのに、50万円は利益とみなされて課税対象になってしまいます。

 

出典:マイナビニュース

 

しかし、購入したときに50万円だった株が移管時に100万円になっていたとしたら、特定口座では100万円で入手したことになります。

 

その後、100万円で売却した場合、売却益は0円となります。値上がりした50万分の利益はなかったものとされるので、非課税と同じことになります。

 

ロールオーバーを忘れないためには

ロールオーバーを忘れた場合の方法についてご説明してきましたが、後悔しないようにするためには、忘れないようにすることが一番です。

 

ロールオーバーを忘れないようにするためには、下記のような方法があります。

 

保有した年度を把握しておく

ひとつの銘柄を保有している場合でも、NISA口座で購入した年度によって、ロールオーバーをするタイミングが異なってきます。

 

保有している金融商品がいつ購入した商品なのかを、しっかりと把握しておく必要があります。

 

同じ銘柄でも何年かに分けて買い増した場合などや、利益を確定するために何度も売買を繰り返した場合などは、特に注意が必要です。年度ごとに購入した銘柄と数量を整理して、記録しておくようにしましょう。

 

手続方法を知っておく

ロールオーバーの手続方法は、証券会社や金融機関ごとに異なります。書類が必要なのか、WEB上で完結するのか、あらかじめ確認しておきましょう。

 

書類の場合、書類自体の請求も必要なところもあるので注意しましょう。

 

ロールオーバー自体の期限は年末ですが、締切りは金融機関ごとに異なっています。締切りが11月中と早めに設定されていることもあるので、先に確認しておいて早めに手続きするようにしましょう。

 

証券会社からのお知らせを確認する

ロールオーバーについての書類やメールでの案内を自動的に送ってくれる会社もあれば、こちらから請求しないと送ってくれない会社もあります。

 

なので、ロールオーバーの時期が近づいてきたら自分で必ず確認するようにしましょう。

 

また、郵便物をすぐ開封しなかったり、あまり使っていないメールアドレスを設定していたりすると、案内が来ていても気づかないことがあります。証券会社から案内には、常に意識を向けておくようにしましょう。

 

まとめ

ロールオーバーを忘れてしまうと、途方に暮れてしまうかもしれません。しかし、ロールオーバーをしないことのメリットも存在します。

 

もしも、ロールオーバーを忘れてしまったら、現在保有している金融商品の損益状況を確認して、その状況にあった対応策を実施するようにしましょう。

 

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